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「求人情報提供ガイドラインと適合メディア宣言制度」についての記事が、REPORT JARO 2017年7月号に掲載されました。

2017.07.28
お知らせ

中央大学経済学部教授、博士(商学)
阿部正浩(あべ まさひろ)

1966年福島県生まれ。慶應義塾大学商学部卒。同大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。2013年から現職。
主著は『日本経済の環境変化と労働市場』(東洋経済新報社)。


日本の労働市場は終身雇用や年功序列で柔軟性に乏しいといわれる。しかし、意外に転職は多く、2015年1年間で、延べ約503万人が転職しており、これは労働力人口の10人に1人に相当する。換言すれば、10年で全員が転職することを意味し、われわれが考えている以上に労働市場の柔軟性はある。

 転職した人のうち約30%(約147万人)が求人情報誌の情報を活用して転職している。
ハローワーク(約18%)や民間職業紹介(約5%)に比べて、求人情報誌で転職先を決めている転職者が圧倒的に多い。法制度や政策の上で関心が持たれるのは職業あっせん機関や派遣会社についてだが、最も労働市場の情報を流通させているのは求人メディアだ。
 転職する人たちにとって、求人情報誌は重要な役割を果たしているのだが、そこで正確で信頼できる情報が流通されないと労働市場の需給調整は混乱を来してしまう。最近では、給与に一定の残業手当などが含まれて求人票に提示され、実際の所定内給与は低い、といった固定残業代の問題が話題となっている。また、実際とは異なる雇用形態や労働時間を提示する求人募集者も少なくなく、求人詐欺として問題視されている。

 求人情報の正確性や信頼性を高め、労働市場のマッチングをより効率的なものにし、求職者の福利に資するため、2016年夏から厚生労働省委託事業「求人情報提供事業の適正化推進事業」がスタートし、「求人情報適正化推進協議会」(事務局は全国求人情報協会)が立ち上がった。この協議会は、公労使の三者で構成され、計5回にわたって「求人情報提供ガイドライン」について議論し、2017年2月にまとめた。

 ガイドラインは、①倫理綱領、②掲載を差し控えるべき事項、③求人情報の掲載前後に確認する事項、④表現に留意すべき事項、⑤掲載明示項目および明示に努める項目、から成っている。それぞれの項目について、ガイドラインの必要性を説明するとともに、実例を挙げて具体的な表記についても解説している。例えば、賃金や応募資格などの表記について、可と不可のそれぞれの例が示されている。

 協議会では、求人情報提供事業者にガイドラインを実施してもらうために「求人情報提供ガイドライン適合メディア宣言制度」(仮称)も整えている。この制度は、協議会が配布する自己チェックシートを利用して、ガイドラインに沿った事業ができているかどうかを事業者にチェックしてもらい、その上でガイドラインを順守した情報提供を行っていることを宣言してもらうものだ。今後、協議会では宣言制度を求職者と求人者にも認知してもらう取り組みを行い、多くの求人情報提供事業者に宣言してもらおうと考えている。

 ガイドラインと適合メディア宣言制度の周知は、セミナーの開催によっても行っている。既にこの3月までに5回行っており(東京4回、大阪1回)、130名ほどの参加者があった。今後もこうしたセミナーを開催すると同時に、ネットなどを利用したセミナーも検討している。さらに、事業者のガイドライン順守の仕組みづくりなどについても、協議会に相談・支援の窓口を設けているので、ぜひ利用していただきたい。

 今回のガイドラインは求人情報提供事業者を主に対象としているが、求人募集を行っている全ての企業にも参考にしてほしいと考えている。求人情報提供事業者はあくまで求人企業の求人情報を提供するわけで、故意に改ざんして虚偽の情報を提供することは基本的にはないからだ。2018年1月1日から施行される改正職業安定法では、求人者の労働条件明示が義務となっており、違反すると厚生労働大臣による勧告や公表を受ける。求人情報提供事業者が求人企業の正確で信頼できる情報を提供するには、そもそも求人企業が正しい情報を提供しなければならない。

 多くの企業が、このガイドラインを基に求人情報を提供してほしいと願っている。正しい情報を提供することは、結局のところ、求人企業にとっても、最良な人材とのマッチングができるようになるという意味でも望ましいと考えるからだ。

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公益社団法人日本広告審査機構(略称:JARO)発行の「REPORT JARO 」2017年7月号をJAROの許可を得て掲載しております。

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